第2章 ホグワーツ魔術学校
真っ黒の革張りの大きなトランクはおよそ女の子が持つような物でないように見えた。
「大きいわね…一体何が入ってるの?」
「うーん…色々入ってるんだけど…本が多いかも」
キラはトランクを開けて、制服の替えのシャツを取り出しハンガーにかけ、その下に入っていた本を数冊取り出し、キャリーに手渡した。
「…読めないわ」
「日本語の本も持ってきたから」
「ちょっと見せて…」
アニーが本を手にする。
「バラの本…?」
どうやら開いたページに挿絵があったようだ。
「そう。私、日本でバラの栽培の勉強をしてたの。こっちでも温室があるって聞いて、ちょっと場所を貸してもらえたらいいなと思って」
トランクの端に入れたボトルを取り出し、手近にあった飾り杯に中身を移す。
姫良はその杯を二人の前に差し出した。
「これ…ポプリ?」
「いい香り…」
二人は鼻をくすぐる華やかな香りにうっとりとした表情を見せた。
「キラが作ったの?」
「うん。これはバラだけど、こっちにはラベンダーを入れてあるの」
慣れない場所でも安心して寝られるようにと日本から持ってきたものだった。
その二つのボトルと取り出した本は作業机横の棚に並べることにした。
「もし良ければ、二人のベッドサイドにも置いてみる?」
「ええ、ぜひ!」
キャリーとアニーのベッドサイドにも同じ飾り杯が置いてあったので、キラはそこへポプリを入れた。
「ありがとう…」
アニーは嬉しそうに杯を両手で抱え、ベッドサイドへ置いた。
キャリーも同じくベッドサイドへ杯を置き、もう一度香りを堪能する。
「気に入ってもらえてよかった」
「キラにハグすると良い匂いがするのはコレだったのね」
そう言ってキャリーはぎゅっとキラを抱きしめ、大きく息を吸い込む。
ふわふわした髪がキラの頬を掠め、アニーからのハグも受ける。
「うん、良い匂い…」
「私、今日一日であなたのことが大好きになったわ!」
「わたしも…」
二人の言葉にキラは嬉しくなって、私もあなたたちが大好きよ、と微笑んだのだった。