第11章 Dの道
『君を我がマルフォイ家のパーティーに招待する。ドレスはこちらで用意するので心配いらない。この件は他言無用だ』
(Mr.マルフォイからだ…!)
「あっ」
ルシウスからの手紙だと認識したのもつかの間、二枚目の文字がすっと消えた。
突然のことにキラは狼狽した。
「キラ?」
「え、あ……えと、おばあちゃんの知り合いから、みたい」
咄嗟にそう答える。
「あら、じゃあおばあ様も一緒にお迎えに来てくださるのかしら?」
「そうなのかな…そうだとは書いてなかったけど」
キラは文字の消えた便箋を一枚目と一緒に素早く折り畳み、封筒の中に戻した。
制服の内ポケットに大事そうに仕舞い込む。
(嘘じゃ…ないよね、一応…)
とはいえ、これ以上この話題を続けるとうまく誤魔化せる自信はない。
文章を消すなどという魔法をかけているということは、ルシウスはよほど秘密主義らしい。
もしバレでもしたらどうなることか。
キラは慌てて話題をそらした。
「それで…キャリーの夏休みの最大の目玉はもう決まってるの?」
「それがね! 今年はメキシコに行こうかって話しになっているの」
「メキシコってサボテンがいっぱい生えてるところ?」
「え、えぇ…場所によると思うけれど」
キラの質問にキャリーは呆れながら頷いた。
「アニーは?」
「あたしのところは…どうかなぁ…いつもサプライズだから…」
今まで行ったのは、イタリアやスペイン、そしてオーストラリアらしい。
キラにとっての初海外はここイギリス。
それまで日本から出たことがなかったので、二人の話はとても興味深かった。
ルシウスの家に招かれたこと以外、キラには特に代わり映えのない三ヶ月になりそうだ。
(ああ、でもトリカブトのことは調べなくっちゃ)
先週末、図書室ではそんなに興味のなさそうな顔をしていたダモクレスが一変して、温室で質問攻めに合ったのだ。
トリカブトの漢方薬について教えて欲しい旨を書いた祖父宛の手紙はペットの翡翠に託した。
しかし自分の目でも確かめてみたい。
育てられるのなら、ホグワーツに苗を持ち帰るつもりだった。