第11章 Dの道
セブルスの誕生日から二週間ほどが経った。
最近気づいたのだが、大広間で食事を取っている際に、彼はしばしばグリフィンドールのテーブルに目をやっていることが多いようだった。
セブルスの視線の先を辿れば、リリーが丸眼鏡の男子生徒と隣同士に座り、おしゃべりしている。
その姿は彼らが大広間にいるときはほぼ毎回見られた。
丸眼鏡の男子生徒はリリーのことが好きでたまらない、と言った様相で、ひたすら彼女を笑わせようと身振り手振り喋っており、時折くしゃくしゃな髪の毛をさらにぐしゃぐしゃにする癖があった。
その近くには大抵シリウスが座っているので、どうやら彼は単なる友人。
つまり、セブルスのライバルは丸眼鏡の男子生徒のようだった。
シリウスの隣には随分と顔色の悪い生徒が座っている。
セブルスよりも青白く、生気がないように見える。
(…なんか、あの人どんどん死にそうになっていくな…)
先週はそこまでじゃなかったような。
相当体調が悪いのだろうか。
(……まぁ私には関係ないけど…お大事に)
全くもって知らない生徒であるが、心の中でそう思わずにはいられないほどだった。
昼食を食べ終えて、キラたち三人は移動のため早めに席を立った。
「次の授業は薬草学ね。手が汚れるのが嫌だわ」
「手袋使ってるのに?」
「他人が手をつっこんだ手袋よ? 汚いじゃない!」
「え、そっち?」
「…気持ちはわかるわ…」
「そ、そう?」
園芸用の手袋に対して、そんな風に思ったことのなかったキラは二人が嫌そうにため息をつくのを苦笑いで受け止めるしかない。
そもそもキラは備品ではなく自前の手袋を使っているのでそんなことを考える必要もないのだが。
「私たちもキラみたいに自分用の手袋を用意すべきかしら」
「そうだね…」
「それで授業に集中できるなら、用意した方がいいかもね」
そんな話をしながら授業が行われる一号温室へ向かう。
少し早めに到着したので、キラはほんの少しだけ、と席を立って温室内の植物を見て回ることにした。
一号温室にはハナハッカが植えられている。