第10章 見つめるその先
「うん。薄いピンクが一般的な桜って言われる方で、濃いピンクの方は八重桜って言って、同じ桜なんだけど品種が違うの」
「そうなの。私はその八重桜っていう方が豪華な感じがして好きだったわ」
消えちゃったのが残念ね、とキャリーはため息をついた。
お昼休みの終了を告げる予鈴が鳴ったのを合図に五人は城へ向かって歩き出す。
キャリーとアニーはその日の夜まで桜吹雪のことを何度も思い出してはうっとりと感想を述べた。
その度にキラはむずがゆい気持ちになったが、偉業を成し遂げたかのような気でもあった。
傍目には大成功の誕生日プレゼントだったと思う。
(でも。セブルスが最後に見ていたのは…)
やはりセブルスはリリー・エバンズが好きなのだ。
彼はマグルを嫌うような素振りをするし、グリフィンドールが大嫌いだ。
それなのに、彼女のことが好きなのだ。
(どうして? 接点なんてなさそうなのに)
クリスマスの夜のことが思い出される。
『リリー!』
『もう二度と…決して私に近づかないで』
セブルスの伸ばした手を振り払って、リリーは去って行った。
あのとき、傷ついた顔で立ち尽くすセブルスにキラは声をかけることができなかった。
何があったのかはわからない。
けれど、二人の仲がそんなに浅くはなく、そして決定的な何かがあったのだろう…ということは感じ取れた。
(セブルスは、恋してるんだ)
眩しい太陽のような彼女と闇に溶け込むような彼。
二人はまるで正反対なほどに違った。