第12章 【第十一章】キセキの領主 =黄瀬=(激戦の海)
= 誠凛 =
誠凛軍は、帝光大国・海常へ向けて艦隊が出港した。
明朝、海常の領海へ入る。
海常の領地は、陸と海が3対7の割合でなっており、海に浮かぶ諸島をすべて手中に納めている。
いわば海常の領主とは、海の王。
海の潮風が、誠凛の帆を膨らませ船を海常へ運ぶ。
その船の甲板に、1人の影がある。
火神だった。
火神は、明日の対戦に心踊らせ、興奮して眠れないでいた。
『明日は、キセキの領主との対戦!うきうきして、寝付けねー!!!』
目をギラギラさせながら、船の行く先を見据えている。
「火神くん、寝ないんですか?」
「おわっ!!!!黒子!!!うわっ!うわっ!!」
暗闇から、黒子が顔を出した。
火神は驚きすぎて、海に落ちそうになり、どーにかこーにか踏みとどまる。
「大丈夫ですか?」
「オメーのせいだろっ!!」
盛大に突っ込み、息をついた。
「お前こそ、寝ないのか?」
「ちゃんと寝ます。……火神くん。明日、勝ちましょう。」
黒子の瞳は、進み行く海の向こうを見ている。
火神はその目を横目で見て
「あぁ。」
そう呟いて、2人は甲板で暫く立っていた。
= 海常 =
そのころ、海常では、
「出港するっ!!!」
笠松キャプテンがすべての艦隊の指揮をとる。
海常の艦隊は、次々と海へ繰り出していく。
「おい、黄瀬。いいのか?」
俺の横にいた笠松キャプテンが、進路を見据えながら聞いてくる。
「いいんス。…俺も黒子っちも、美桜っちを助けたい。
だけど、その前に戦士として、負けるわけにいかないんス。」
俺は苦笑して、この船の向こうに進み来る、誠凛軍に思いを馳せた。
次の日
海の上、両国の艦隊が対峙した。
黄瀬は甲板に上がり、誠凛の艦隊を見据える。
そして、黒子と火神も、目の前に広がる海常の艦隊を見据えた。
『来たっスね、黒子っち。』
『負けません。』
『キセキの黄瀬、ゼッテー倒す!!』
3人の思いが交錯する。