第11章 【第十章】キセキの領主 =黄瀬=(対戦要求)
「桃井さん、城から脱出することが出来たんですね。良かった。」
黄瀬から聞いた桃井を、若干心配したが、彼女は強いから大丈夫だろう。
そう思って、黄瀬との話に戻った。
「で、俺たちは、他国への進軍を始めたんス。」
黄瀬は、腕を縛られあぐらで座り、僕たちを見上げていた。
「…じゃあ、君たちキセキの領主は、本当に美桜姫の為だけに、他国進軍しているっていうの?」
黙って聞いていた、リコが険しい顔をして、黄瀬に問いかけた。
「そうっス。俺たちは、美桜っち姫が大事だから、彼女を守る為なら、他国の進軍ぐらい、なんでもないんス。」
さも当たり前のように、平然と言ってのける黄瀬に、よく分からない苛立ちを感じる、リコ。
すると、黒子が口を開いた。
「…美桜姫は、帝光大国の各領主への敬愛を素直に表し、民を一番に考える、心優しい人なんです。
だから、黄瀬くん。
今の君たちのやり方は、彼女を傷つけてしまう。
例え、それで彼女が生かされていたとしても……。」
黒子は、そのまっすぐな瞳で黄瀬を射抜く。
「黄瀬くん、僕たちと戦ってください。」
風が吹く。
「なに……言ってるんスか?黒子っち。」
動揺する黄瀬に、黒子は笑う。
「黄瀬くんと戦って、君を捕虜にします。
そして、誠凛軍は海常へ進軍。
帝光大国の一角を、誠凛で崩すんです。」
それを聞いたリコが、慌てた声を上げた。
「ま、待って、黒子くんっ!!
私は確かに、協力するとは言った。
けど、まだ国王への進言をしてないし、国として、どう協力するかは決めていないのよ。
誠凛としては、自分の国を守れればいい。
帝光大国への進軍なんて…」
そこまで言葉を発して、止まってしまう。
この海常の黄瀬を食い止めても、きっと他のキセキが進軍してくる。
噂だと、キセキの軍はすごい速度で他国を凌駕し、領地を拡大していると聞く。
キセキの領主の狙いが、王都に捕らえられた美桜姫救出と、裏切り者のの抹殺だったとしたら、ここは、黒子達に力を貸した方が、平和な未来が見えるのではないか?
リコは顎に指を添え、頭の中で、状況と勝算値を計算する。
「進軍しようぜ、リコたん。」
「パ、パパ?!」