第10章 【第九章】領主の憤り
[ 青峰 * 6年前 ]
あれは、桃井と一緒に王都へ行った時だった。
桃井はこれでも、一応貴族で、俺は次期領主で、国王へ謁見しにきたのだった。
俺は、退屈な城の中で死にそうになって、城の中で一番大きく日が当たって気持ちいい、木の上で寝ていた。
「青峰くん。」
「うぉっ!…おっまえ、脅かすなよ……。」
俺が寝ていた木の枝の反対に、黒子が座っていた。
「美桜姫と桃井さんが探してますよ。早く下に降りてください。」
「やだよ。俺は寝る。」
黒子の言葉を無視して、目を閉じる。
木漏れ日と、草の音、春の匂いがする。
穏やかな時間の中で、まどろんでいると、笑い声が聞こえる。
「もー、こんなとこにいるなんて……大ちゃんはぁ!」
「ここ、すごい気持ちいいねぇ。木登りなんてしたことなかったけど、こんなに気持ちいいなら、今度は一人で……」
「ダメです。本当は木登り禁止なんですから。これが最初で最後ですよ。」
俺は騒がしい声に、薄めを開ける。
すると、桃井と美桜が、俺が寝ていた枝に登り、俺を見下ろしていた。
「?!お、お前ら!!」
慌てて起き上がると、3人は俺を見て笑った。
「テツくんに登らせてもらったの。」
「楽しかったぁ。ふふっ。」
桃井と美桜は楽しそうに、笑っている。
「僕は、青峰くんをお越しにきたのに、全然起きてくれないですし。2人を連れてくるしか方法を思い付かなくて。結構、大変でした。」
それから、しばらく4人で木の上にいた。
桃井と美桜は、あぶねーって言ってるのに、枝を揺らすし、黒子のヤツは、生意気な口を叩くし。
そんな黒子に俺はヘッドバックを仕掛け。
楽しかった。
あの頃の4人は、
一人は、行方不明になり。
一人は、幽閉され、明日にも殺されるかもしれない。
残された二人は、自分の無力さを全身で感じるしかなかった