第10章 【第九章】領主の憤り
=秀徳=
「分かった。今日は遅い。領城内で休め。部屋を用意させるのだよ。」
夜も更けに、一騎の馬が領地に入ってきた。
桃井だった。
いよいよ開戦かと思ったが、桃井の様子を見て、最悪の事態に陥ったと、理解した。
俺は、自室の扉に聞き耳をたてているであろう高尾を呼び、桃井の為に、部屋を用意させた。
夜風が、部屋の中に入ってくる。
俺は、テラスに出て頭を冷やした。
『美桜姫が幽閉…。黒子が行方不明。』
「しーんちゃん…。桃井サン、部屋に案内してきたよ…。」
高尾は、俺がいるテラスまで近づいて、テラスの手摺に背を預けた。
「…高尾。……勝手に部屋に入ってくるななのだよ。」
俺は、高尾を見ず自分のテーピングしてある手を見つめる。
「…真ちゃん。…美桜姫、心配だよな。」
高尾も、俺を見ず、夜空を見上げている。
「…今は、助けに行けないのだよ。しかし……必ず救うぞ。高尾。」
「あいよ。真ちゃん。」
高尾は、俺を見ずに笑い。俺は眼鏡を押し上げた。