第6章 【第五章】新しい仲間
『…着きました。誠凜諸島。』
目の前には赤い屋根の家々が立ち並び、沢山の出店がメインストリートを埋めている。
黒子は、灰色のマントを海風に靡かせ目の前に広がる景色を見て、下船する。
「行きますよ、2号。」
足元には白と黒の小さい犬を連れて………
カモメが鳴いた港町、ここは《シェークドバニラ》。
人々は行き交い、賑やかな町だった。
「ほれ、にーちゃんこれ買ってきなっ!」
「うわ、うまそっ」
三角巾を被った恰幅がいいおばちゃんが、若い男子をつかまえ、出来立てホカホカの白いまんじゅうを勧めている。
また向かい側では、
「そこの旅人さん、これ良く効くよっ!」
「うむ、買うかな。」
腕がハムみたいに太いおじさんが、沢山の種類のプロテインを売っている。
全ての店主に見つかることも、声を掛けられることもなく、黒子は犬を連れて黙々と誠凜国の城下町を歩いていた。
「おい、これ見ろよ。明日、グラディエーター大会やるってさ!」
「お前出てみろよ。」
「やだよ!」
店先の貼り紙を見て、何やら小突きあっている若者の言葉に黒子の足は止まった。
しかし、若者は黒子に気付かず話を続けている。
「…最近さぁ、あの帝光が他の国を攻めてるってきいたぜ?この大会って、兵士集めかな?」
「……誠凜も戦争になるのかな…」
不安を滲ませる会話に、黒子はグッと拳を握りしめていた。
「ま、大丈夫だって!うちの騎士団つぇーって聞くし。」
不安がっていた若者を、もう一人が明るく声を掛けて城下町へ戻っていった。
『……………』
黒子は先ほどまで若者が読んでいた張り紙を読む。
そしてフードを深く被り、町の中に紛れた。