第5章 【第四章】君を助ける為に…
『………お父様………』
今日の朝、容態を見に行ったのが最後で今どうなっているのか…。
血の気が引いた顔、冷たくなった手を思い出して、胸が苦しい。
美桜は狭い檻の中で、座り込んでしまう。
そして、ふいに思い出したのは、今日出立した友人たちの顔。
『敦』
拙い言葉で励まして、頭を撫でてもらった、あの時の優しく大きな手の温もり。
『涼太』
突然、抱き締められた強い腕の力と、言ってもらった真心の言葉。
『真太郎』
手渡してくれた薬と、険しい表情で心配してくれた顔。
『大輝』
さつきを私の側に残し、去る時合わせた拳の感触。
『征十郎』
周囲を警戒し、誰にも知られないように渡してくれた手紙。
『さつきちゃん』
皆を見送った時、私の肩抱いて勇気つけてくれた温かい気持ち。
『 テツヤ 』
物心つく前から一緒だった。一緒に育ってきたのに、いつの間にか黒子は私を“美桜姫”と呼ぶようになって…。
いつも傍にいて、私を守ってくれていた。
檻の中で目を閉じ、子供の頃の思い出をひとつひとつ、大切に思い出していた。