第3章 【第二章】(隙間)領主の想い
【黄瀬の想い】
廊下を通る度に、メイドに見つかり騒がれたが、今は一人になりたかった。
適当に愛想を振り撒いて、自分に与えれた部屋に下がる。
黄瀬は、今日起こったことを考えながら、着ていた上着をソファに投げ、ベッドにダイブした。
素晴らしいスプリングに顔を埋まらせ、目を閉じる。
俺がいたところからは、何が起こったのかあまり見えなかった。
美桜っち姫の悲鳴が聞こえて、王族バルコニーを慌てて見上げると、もう何も見えなかった。
ただ、美桜っち姫の声が聞こえるだけ…
黄瀬は、上体を起こして立ち上がると、水を飲もうと水差しを持ったが、すぐ飲むことをやめる。
『…念には念っス…』
緑間から、以前貰った黄色の花びらを水に浮かせると、黄色が瞬く間に赤く変色して、水差しの底に沈んだ。
「何なんスか…、これ…」
黄瀬は指で唇を触り、爪を噛む。
『黄瀬、これをやるのだよ。女性関係にふしだらなお前の事だ、どこで毒を盛られるか分からないのだよ。』
以前、領主同士の会談で、集まった時のことだった。
緑間は、黄色花びらが入った小瓶を黄瀬に投げると、黄瀬は見事にキャッチした。
『緑間っち、ひどっ!…まぁ、もらっとくっス。緑間っちから、なんか貰うなんて、貴重っスからね~。』
『な!…もうやらん!』
『いやいやいや、もう貰ったんスから!
で、これ、どうやって使うんスか?』
『…それを一枚調べたいものに付着させろ。黄色から変わらなければ、薬品は使われてない。青に変われば、体に無害だが何か入っている。赤に変われば、体に有害…死に至る薬品が含まれているのだよ。』
『りょーーーっかいっス。』
あの時は、まさかこの色の花びらを見ることになろうとは思っていなかった。
静かなる殺意…
『俺も…命を、狙われてるってことっスか…?』
ふと、水差しの横に一枚のメモが置いてあることに気付く。
《海常の領主、次は美桜姫の命を奪う。姫の命を守りたければ、領地に退け》
黄瀬はメモを握り潰し、激しい怒りに拳を震わせた。