第1章 【第一章】静かなる崩壊
「お父様っ……おとう…さま…」
美桜は冷たく骨ばった手を握り、青白く頬が痩けた顔をもう一方の手で包み込む。
見る影もない父の容姿に、美桜は全身が震え涙が溢れる。
『何故…こんなことに……』
《一ヶ月前》
その日は、国の創立祭だった。
国中は浮かれ王都はお祭り騒ぎ、各領地から領主も集まり、城内もとても華やかだった。
「美桜っち姫!」
「あ!涼太!!」
大広間の宴会場で、海常の仲間と酒盛りしていた、海常の領主:黄瀬涼太が、階段を降りていた美桜を見つけ、爽やかな笑顔で片手を上げている。
美桜は、知った顔を見つけ、満面の笑みを浮かべ走り寄った。
「美桜っち姫、おひさっスねー。」
「うん、久しぶり涼太。元気そうで何よりだわ。」
「美桜っちも。」
笑いながら、話をしていると、
「しーんちゃん、コッチ・コッチ!美桜姫いた!」
「姫に、何て口を叩くのだよ、高尾。」
人混みから、秀徳2人組もやって来た。
「あ、真太郎。高尾くんも、久しぶり。」
「久しぶりなのだよ。」
「あっれ~、何で俺だけ名字?!」
「真太郎が会うたびに、高尾・高尾って言うんだもの。」
秀徳2人組は、あーだこーだと漫才を始め、美桜は、クスクス笑いながら見ていると、
「あーーー、美桜っ!」
突然、後ろから抱きつかれたかと思ったら、ピンクの髪の毛が揺れ、桃井の全快の笑みと目が合う。