第2章 アリスと白うさぎ*縁下力
「あ、すみません!つい夢中で…」
「別に大丈夫だよ。でも暗いから危なくない?」
華楓は本に目をやりながら縁下の言葉に返事をする。
「じゃあ…こうすれば大丈夫ですか?」
「えっ…え!?」
華楓は片手で縁下の服の袖を掴みもう片方で本を持ち読書をし始めた。
「えっと…華楓ちゃん?…」
縁下が声をかけても華楓は読書に夢中で気づいていない。
この状況…俺他の人からどんな風に見えるんだろう…ダメだダメだ…平常心平常心…
上がっていく心拍数を抑えようと必死な縁下。すると同時に華楓がいきなり止まった。驚いた縁下はすかさず華楓に言った。
「どっどうしたの?」
「片手じゃページめくるの大変なので1回ストップです」
そういうと華楓はページを1枚めくる。そして縁下は言った。
「…キリのいいところまで読む?」
「…」
「…」
華楓がキリのいいところまで読むということで2人は近くの公園に来た。辺りは真っ暗で車も1分に1台通るか通らないかぐらいだった。
「もしかして…アリスの舞台やるの?」
縁下は華楓の本の帯に書かれていた『舞台化決定』の文字を見て言った。華楓は縁下の言葉に反応したのか本から顔を上げ、縁下の問いに答える。
「はい!残念ながら東京でしかやらないんですけど…」
「そっか…で、華楓ちゃんはどれやるの?」
興味を示す縁下。お互い話すのがよっぽど楽しいのか学校を出た直後に比べて表情が明るい。
「白うさぎです!」
「白うさぎかぁ…俺てっきりアリスだと思ってた」
「ええええアリス!?いやいやそんなあたしにアリスなんて…」
華楓は驚きまくっている。縁下がこんなことを言うとは思っていなかったからだ。縁下はそんな華楓を見てクスッと笑った。
「だって華楓ちゃん可愛いからアリス似合うと思うよ」
「…えっと…その…」
率直に可愛いと言われた華楓は顔が少し照れ顔になっていた。それを見た縁下も真っ赤になっていた。
「てっ照れないでよ!…俺まで恥ずかしくなる…」
縁下の赤面した顔を見てさらに恥ずかしくなる華楓。