第13章 私の願い 二人の想い *番外編*
イヴがあの美術館の記憶を取り戻してから、四年と半年が経った。
この半年で、イヴは文通を始めたようだが、相手は誰かは教えてくれなかった。
ある日のこと――
今日もイヴはポストから手紙を取り出し、サッと目を通して自分の部屋に――戻らず、なぜか私の方に駆け寄ってきた。
「メアリー!! 来週の日曜日って空いてる!?」
「う、うん。何もないけど……」
興奮気味に聞くイヴに驚きながらも私はうなずく。
「じゃあ、一緒に出かけてもいい?」
「いいけど……」
私の了承の答えに、嬉しそうにイヴは笑い
「今度の日曜日、家を九時に出るからちゃんと準備しておいてね」
「わ、分かった」
約束をするとイヴは太陽のような笑みを残し、自分の部屋に戻った。
「……あ、」
そう言えば、どこに行くか聞いていなかった。一体イヴは、私とどこに行こうというのだろう。
私は当日まで、もやもやしながら過ごした。
*
「……ねぇイヴ。いい加減教えてよ。どこに行くの?」
「だから秘密だって!!」
日曜日。私はイヴに連れて行かれるまま道を歩いていた。何度か行く場所を聞いているのだが、ずっと言ってくれなかった。
「もうすぐ着くよ。……あ、あそこ!!」
イヴが指差した場所を見るが、そこはただの公園だった。日曜の昼間なのにも関わらず、人影はほとんど無く、がらんとしていた。
そんな寂しい公園に、人影が一つ。
イヴはその人影に向かって走り、勢い良く抱き付いた。
私は状況が読めないまま、イヴの後を追う。そして、そこに立っていた人の顔を見た瞬間、私の頭は時間が止まった。
なぜならそこに立っていたのは、この世界に居ないはずの人間だったから。
――私の願いのために消してしまった人間だったから――
「嘘……ギャリー、なの?」
私は、まるで幽霊を見るような目で見つめると
「久し振りね、メアリー」
ギャリーは私と初めて会った時と同じように笑った。