第13章 私の願い 二人の想い *番外編*
美術館から出て一年後――イヴの誕生日にそれは起こった。
イヴのお父さん――つまり今の私のパパ――から誕生日プレゼントとして貰った『ゲルテナ作品画集』に載っていた絵を見たイヴが、記憶を取り戻したのだ。
私がそれを知ったのは、その日の夜、イヴの部屋に遊びに行った時だった。
ノックしようとドアの前に立つと、奥からすすり泣く声と、それに紛れて言葉が聞こえたのだ。耳を澄ませた私は、驚きの余り固まった。
その言葉は、イヴが覚えているはずもない人物の名だったから。
――思い出してほしくなかった――
ギャリーを慕っていたイヴは、きっと私を嫌いになるから。
(お父さん……これはやっぱり罰なのかな……)
『犠牲にした分まで生きて、一生償い続けろ』
という言葉を思い出した私は、心の中でそっと罰を受ける覚悟を決めた。
*
次の日、私は外に出ようとするイヴに話しかけた。本当に思い出したのか、確認したかったのだ。
『全部思い出した』
と言うイヴに
「嫌われたくなかったの……」
私はポツリ取り戻した本音をもらした。
そんな私の手を取り、イヴは私の目を見開かせる言葉を放った。
「あの時の事を思い出しても、私はメアリーを嫌いになったりしないよ」
「…………、うん。ありがとう、イヴ」
私は笑いながらイヴを見送った後、壁にもたれ掛かって天井を仰ぎ見た。
……どうして許してくれるの? あんなに酷い事をしたのに……?
イヴは優しい子だということは知っていたが、これは許されるべきではない罪だ。なのになぜ……?
考えても考えても、その答えは出なかった。