第13章 私の願い 二人の想い *番外編*
「何バカな事言ってるのイヴ!!」
イヴの返事を聞いたギャリーは、すぐさま自分のコートのポケットに手を突っ込んで、真っ青な薔薇を取り出した。
「いいわ。イヴの薔薇と交換して」
「え? 本当にいいの?」
「ええ」
「やった!」
何はともあれ、計画は成功したのだ。これでやっと願いが叶う。
私はイヴの薔薇を差し出し、ギャリーの薔薇を受け取った。
「……あは、あははは、ははははは!!」
そして私は青い薔薇を手に、あの絵に向かって走り出した。
*
「好き……嫌い……好き……嫌い」
あの絵に向かう途中の開けた場所で、私はギャリーの薔薇を取り出して、一枚一枚千切っていった。
「……好き!!」
最後の一枚を千切った瞬間、私は笑いが止まらなくなった。これで確実に願いが叶うのだから。
花弁が一枚も無くなった寂しい茎をポイッと捨てて、私はまたあの絵に向かって足を進めた。
あの絵――『絵空事の世界』は、お父さんが描いた作品の中で一番大きな絵で、この世界から出られる唯一の出口だと、遠い日のお父さんは言っていた。
(確か、絵に触れると出られるんだっけ……)
お父さんの言葉を思い出しながら絵に触れようとすると、少しずつ近付いて来る足音に気が付いた。
私はすぐに物陰に隠れて様子を見た。足音の主は、もちろんのことイヴだった。
イヴは少し戸惑いながら、絵に触れて中に入って行った。
イヴが居なくなった事を確認した私は、イヴの後を追うように絵に触れた。