第13章 私の願い 二人の想い *番外編*
私の薔薇は、お父さんがここから出て行く前に私にくれた物だった。
『この美術館において、薔薇は己の命を表す。外から来た者には自動的に与えられるが、お前には無い。いつか外の者と会うのなら必要だろうから、私が作ってやろう。大切に持っていなさい』
言われた通りに大切に持っていたのに、イヴに私の秘密が知られる心配がなくなった気の緩みからか、私は自分の薔薇を落としてしまった。
「あら? メアリー、薔薇落としたわよ……って、え?」
「触らないで!!」
拾おうとしたギャリーに私は叫び声を上げた。
私の薔薇は二人と違う、作り物なのだから。
私と同じ、ニセモノだから。
ギャリーを薔薇から遠ざけるために、探索中に手に入れたパレットナイフを突き出した。
「ちょっとメアリー!! 危ないわよ!? 早くそれをしまって!!」
「うるさい!!」
パレットナイフを取り上げようとするギャリーと私は揉み合いになり、バランスを崩して――
「……っ!!」
私は床に倒れ、気を失った。
遠くで私の名前が聞こえた気がした。