• テキストサイズ

 『さよなら』の先に  【Ib】

第13章  私の願い  二人の想い *番外編*


 だから私はイヴにこう言った。
「こんなのはギャリーじゃないよ。本物だったらこんな所に居ない」
 ――だから行こう。そう続けるつもりだったが、私が言うより早く、イヴは黙ったまま拳を握りしめて高く振り上げ――ベシィ!! と良い音を響かせて、ギャリーの顔に右ストレートをお見舞いした。
 一緒に居たのは少しの時間だが、それでもイヴが大人しい性格なのは知っていた。だから、そんなイヴが人を殴るなんて思ってもみなかった。

 私はイヴの行動に驚き、固まっていた。すると――
「イヴ……?」
 私はもう一つの驚きで、再び身を固めることとなった。
 今まで正気でなかったギャリーが、イヴの名前を呼んだのだ。

 イヴが嬉しそうにギャリーに抱き付いているのを、私は静かに見つめ、呟いた。
「何で戻ったの……?」

          *

 ラッキーなことに戻ったギャリーは、私が絵である事を忘れている様だった。これでイヴに私の秘密が伝わる心配は無くなった。
 後は、チャンスを見計らって、イヴと私で外に出るだけだ。

 そう考えていた私は、取り返しのつかないミスをしてしまう事を、この時はまだ知らなかった。
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp