第13章 私の願い 二人の想い *番外編*
だから私はイヴにこう言った。
「こんなのはギャリーじゃないよ。本物だったらこんな所に居ない」
――だから行こう。そう続けるつもりだったが、私が言うより早く、イヴは黙ったまま拳を握りしめて高く振り上げ――ベシィ!! と良い音を響かせて、ギャリーの顔に右ストレートをお見舞いした。
一緒に居たのは少しの時間だが、それでもイヴが大人しい性格なのは知っていた。だから、そんなイヴが人を殴るなんて思ってもみなかった。
私はイヴの行動に驚き、固まっていた。すると――
「イヴ……?」
私はもう一つの驚きで、再び身を固めることとなった。
今まで正気でなかったギャリーが、イヴの名前を呼んだのだ。
イヴが嬉しそうにギャリーに抱き付いているのを、私は静かに見つめ、呟いた。
「何で戻ったの……?」
*
ラッキーなことに戻ったギャリーは、私が絵である事を忘れている様だった。これでイヴに私の秘密が伝わる心配は無くなった。
後は、チャンスを見計らって、イヴと私で外に出るだけだ。
そう考えていた私は、取り返しのつかないミスをしてしまう事を、この時はまだ知らなかった。