• テキストサイズ

 『さよなら』の先に  【Ib】

第3章  青い薔薇


『大切な薔薇かも知れないから取り返す!』と決意して戻ってきたはいいものの……

「うぅ……まだ、いる……」

 部屋から出て自由になった女の絵は、檻から出た猛獣の様に獲物を探して這いずり回っていた。

(どうしよう……そのまま行っても駄目だろうし、でも、隠れる場所も無いし……)

 考えに考えた結果、出た答えは――強行突破!

(隠れる場所が無い以上、それ以外無さそうだし……全力で走れば何とかなるよ! きっと……)

 私は大きく息を吸って走り出す。それに気付いた女の絵が襲って来たが避ける。動くスピードは思ったより速くないようだ。
 その勢いのままドアに向かい、部屋に入る。どうやら無事に戻ってこれたみたい。

「はぁ……怖かった……早く薔薇見つけて帰ろう」

 辺りを見回すと、花びらが少ない薔薇が落ちていた。

「あった! ちょっと萎れているけど大丈夫みたい。よかった……」

 薔薇をポケットに入れて立ち上がり、ドアノブに手を置き覚悟を決める。

(まだあの女の絵の人はいるだろうけど大丈夫。さっき出来たから大丈夫)

 自分に言い聞かせてドアを開ける、と同時に全力疾走。女の絵が何か叫んでいたが気にしない。

「はぁ、はぁ、ここまで、来たら、大丈夫、でしょ……」

 安全そうな場所で足を止めて呼吸を整える。この世界に来てから随分と走った。これだけ走ると、少し足が速くなった気がする。
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp