第3章 青い薔薇
しばらくしてドアの前に到着。鍵を鍵穴へ差して回す。
ドアを少し開けて覗くと何かが動いているのが見えた。それは、絵の額縁から上半身が出た女で、何かをちぎっていた。もう少しドアを開くとちぎっている物が見えた。それは……
「青い……薔薇?」
そう口にした瞬間、女の絵がこちらを向いて目が合う。その刹那――
「ギャァァァァァァアアア!」
「……っ!」
女の絵は叫びながら物凄いスピードで走って来たので、急いで外へ出てドアを閉める。すると
――ドンドン……ガッシャーン!
その部屋にあった窓から女の絵が飛び出してきた。私はダッシュで走り、逃げる逃げる逃げる……
「はぁ……はぁ……もう、平気、かな?」
鍵を借りた人の近くまで走って一息つく。落ち着いてくると一つ思い出す事があった。
「そう言えば……あのちぎられていた薔薇、私の薔薇と似ていた様な……」
色は違っていたが同じ様な薔薇だった。だとしたら、誰かの大切な薔薇かも知れない。実際、私は薔薇を手に入れてから一時も手放していない。
「だったら、取り返さなきゃ……!」
私は勇気を奮り絞り、逃げてきた道を引き返した。