第13章 私の願い 二人の想い *番外編*
お父さんが出て行ってから、どれ程の時が流れただろうか。少なくとも、もうお父さんは戻って来ない事を理解出来るくらいの時間は経っただろう。
いつもの様に外の世界を眺めていると、今日は珍しく私と同い年位の女の子が居た。
「お話、したいな……」
この美術館の中で話せるのはお父さんと私だけだったから、お父さんが出て行ってから誰とも話していない。
こちらに引き込んでしまおうか……? そうしたら一緒にお話出来るし、仲良くなれるかも……
「あ……でもダメか……」
そう言って私は肩を落とす。
『こちらに来た人数しか出られない』と言うお父さんの言葉を思い出したのだ。つまり、こちらに引き込んで仲良くなったとしても、外に出られるのは一人だけ。結局は離ればなれになってしまう。
「だったら……」
もう一人、こちらに引き込んでしまえば……?
そうすれば私とあの子が一緒に外に出ても、もう一人引き込んだ人が私の代わりに絵になるだけで、何の問題も無い。
「決まり!!」
私は満面の笑みを浮かべながら、強く『あの子をこっちに連れて来たい』と願った。
すると、外を見るための額縁がチカチカッと光り、フッとあの子が消えた。
「やった!! 成功♪ じゃあもう一人は……あの人で良いや」
近くに居た紫色の髪の男の人を指差し、同じように願うと、その人も女の子同様に消えた。