第12章 『さよなら』の先に
突然上から重い何かが降ってきて、立っていた私はしりもちをついた。
「いった……」
「うぅ……」
勢い良く打ってしまったお尻の痛さに顔を歪めながら、落ちてきたそれをよく見た。
「…………!!」
余りの驚きに私は言葉を失ってしまった。
落ちてきたそれは人の形をしていた。
その人は紫色の髪をしていて、ボロボロのコートを着ていて――
「ギャ……リー?」
私の声に反応したのか、その人はゆっくりと顔を上げ、驚いた様に目を見開きながら言った。
「……イヴ……?」
その声を聞いた瞬間、壊れたダムの様に涙が溢れだし、私はギャリーに抱き付いた。
「うぅ……ギャ……リー。ごめ……なさ……」
泣き付きながらひたすらに謝った。
私が薔薇を無くさなければ、ギャリーは絵の中に閉じ込められる事なんて無かったのに。あんなに苦しい思いをしなくてよかったのに。
「いいのよ。気にしないで」
そう言ってギャリーは、私を優しく抱きしめ返してくれた。
その手には、ギャリーと美術館をさ迷っていた時と同じ暖かさがあった。