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 『さよなら』の先に  【Ib】

第12章  『さよなら』の先に


 今日もする事が無く、美術館の中をさ迷っていたアタシは、表の美術館が騒がしいことに気が付いた。
 騒がしいと言っても、少し人が来ているだけの様だか、それだけの音を久しぶりに聞いた。どうやら工事が終わったらしい。
 様子が見たくて、外と繋がっているアタシの絵の額縁まで走って行くと、そこには――

「…………イヴ?」

 アタシと美術館をさ迷ったあの日より、背と髪が伸びて少し大人っぽくなっていた女の子がいた。どことなくイヴの面影があった。

『ごめんなさい……。私が薔薇を無くしちゃったから……。本当にごめんなさい……』

 久しぶりに聞いたイヴの声が、アタシの耳に、心に響いた。
「違うわ!! イヴのせいじゃない! アタシがやりたくてやった事だから……。だから、」

 泣かないで。

 どんなに声を張り上げたって、この声は君には届かない。
 目の前に君が居るのに、触れることも出来ない。
 なんとかしてこの気持ちを伝えたくて、アタシの絵に置いている君の手に、重なる様に自分の手を置いた。
 その瞬間――

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