第9章 外へ
それを読み終わった瞬間、パッと目の前が光り、絵の額縁が消えた。
恐る恐る絵に触れると、手が絵の中に入った。
「……もしかして……帰れる、の?」
ずっと願ってきた、ここから出る事が、今まさに叶おうとしている。でも――。
「……ギャリー……」
私は一度振り返り、今まで来た道を眺めた。ギャリーはまだ来ていなかった。
「…………」
……ギャリーはきっと来てくれる。ちゃんと約束したから。だから私は――ギャリーを信じる。
私は絵から少し離れ、助走を付けて、
「えいっ!!」
思い切り絵に飛び込んだ。
*
「これで――願いが叶う。外に出られる」
数秒前に赤の少女が飛び込んだ絵を見つめる者が居た。
それは絵に向かって歩き、ゆっくりと中に入った。
誰も居なくなり静かになった場所には、本物よりも輝いている、一輪の黄色い薔薇だけが残されていた。