第8章 おもちゃばこ
「…………」
「? ギャリー?」
急に足を止めてしまったギャリーに気付かず進んでしまった私は、駆け足で戻った。
「大丈夫? 凄い汗だけど……」
「…………イヴ、ごめん。何て言うか……ウソは付きたくないけど、本当のことも言いたくない……」
うつむかせていた顔を上げ、ギャリーは微笑みながら言った。
「……動けるようになったら、追い付くから……先に行ってて」
けれど、私にはムリをしているようにしか見えなかった。
「……はい。これ使って」
「……ハンカチ?」
「うん。汗凄いから貸してあげる。だから――後でちゃんと返してね」
「――――」
ギャリーは驚いたような顔をして固まっていた。
「絶対だよ!!」
念を押すと、ギャリーはまた優しく笑った。
「分かったわ。約束ね」
そう言ってギャリーは右手の小指を出した。
私も小指を差し出し、指切りげんまんをした。
そして私はギャリーに
「絶対来てね!!」
と、もう一度念を押してメアリーを追いかけた。
――これが私とギャリーの最期の会話だった――。