第8章 おもちゃばこ
「メアリー、その薔薇は……!」
ギャリーが驚きながら言うと、メアリーは納得したように言った。
「あぁ、これイヴの薔薇だったんだ! どこかで見たことあると思った!!」
「メアリー、その薔薇をイヴに返してあげて」
「え~そうだなぁ……」
メアリーは少し迷った後、満面の笑顔で言った。
「じゃあ、ギャリーの薔薇と交換して?」
「「っ!!」」
「私ね~赤も好きだけど、青はもっと好きなの!! ……イヴ、それでも返して欲しい?」
……私、は……。
「……別に返してもらわなくてもいい」
ギャリーの大切な薔薇を交換してまでも、私の薔薇を返して欲しいとは思わなかった。
「何バカなこと言ってるの!!」
そう叫んでギャリーは自分の薔薇を取り出し、メアリーに差し出した。
「いいわ。イヴの薔薇と交換して」
「え!? 本当に良いの?」
「えぇ」
「やった~!!」
メアリーが赤、ギャリーが青の薔薇を差し出し交換した。
ギャリーの薔薇を受け取ったメアリーは、
「キレイな色……。アハ、アハハハハ!!」
笑いながら走り去って行った。
「はい! もう無くさないように、しっかりと持っておくのよ」
そう言ってギャリーはしゃがんで、私の手に薔薇を握らせてくれた。
「……ギャリー」
「ん?」
「ごめんなさい。私が薔薇を無くしたから……」
うつむきながら言うと、ギャリーは優しく私の頭を撫でながら言った。
「イヴのせいじゃないわよ。アタシが勝手にやったことだし、それに薔薇だったら今からメアリー追いかけて取り戻すこともできるんだから!」
「……うん。ありがとうギャリー」
「どういたしまして!」
私たちは急いでメアリーを追いかけた。だが――。