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 『さよなら』の先に  【Ib】

第2章  それは、唐突に


目を開けるとそこは変な世界だった。
周りを見渡すと、幾つかの絵が飾ってあり、美術館らしい場所という事がわかったが――

「……なんか、さっきまでいた美術館と違う……」

(取りあえず進まなきゃ)

 震えを抑えながら勘で決めた左側の道を一歩づつ進んで行った先にあったのは、一つのドアと机。机の上には一輪の薔薇が花瓶に生けてあった。それは、

「赤い……薔薇? 綺麗……」

 燃える炎の様に澄んだ赤色をしていた。
 手に取った瞬間、直感が私に言った。

 ――この薔薇は常に肌身離さず持っていなくては――。

 なぜ、こんな風に思ったのかは分からないが、私はその直感を信じることにした。

 近くのドアには鍵がかかっていなかったので入ってみると、そこにあったのは女の人の絵と青い鍵だった。絵の下には張り紙もあった。


【その薔薇●ちる時、あなたも●ち果てる】


(……《朽ちる》って、なんて読むんだろう)

 読めなくても大丈夫だと思った私は、鍵を拾って部屋を出ようとした。すると――

「……今、動……いた?」

 鍵を拾って顔を上げた時に見えた絵は、この部屋に入ってきた時と違っている様な気がした。

(きっと、気のせいだ)

 そう割り切って部屋を出た。次の瞬間私が見たのは、床や壁に真っ赤な字でびっしりと書かれていたのは……


《か え せ》


「……っ!」

 怖くなった私は、ダッシュでこの世界へ入ってきた場所へ走った。そこにはあるはずの物――この世界へ来た時に使った階段――がなかった。

「嘘……帰れなく、なっちゃった…… はぁ……」

 考えてみれば、さっきは変な文字が書かれていたし、その前は絵が動いた(気がした)。階段がなくなっていてもおかしくないのかも……

「やっぱり、進むしかないか……」

 もう一つの右側の道へ進み、手に入れた鍵でドアを開けた。
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