• テキストサイズ

 『さよなら』の先に  【Ib】

第8章  おもちゃばこ


「なんか変な雰囲気の所に入ったわね」
「…………」
 ギャリーの言葉は聞こえていたが、私の頭は動いていなかった。

 あのメアリーが……ずっと一緒にいたメアリーがゲルテナの作品――あの動く絵やマネキンと同じだったなんて……。

「イヴ」
 隣を歩いていたギャリーが足を止め、私と目線を合わせるようにしゃがんだ。
「メアリーのことはショックだったでしょうし、すぐに気持ちを切り替えるのも難しいでしょうけど、」
 一度言葉を区切って、うつむいていた私の顔に手を置いて少し上に向かせて続けた。
「下を向かないで、前を見て。少しづつでいい。一歩づつでいいから、前を見て歩きましょ」
 ね! と優しくギャリーは笑った。

 ギャリーだって辛いはずなのに……。

「……うん。ありがとう、ギャリー」

 ギャリーのおかげでやっと笑うことができた。
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp