第8章 おもちゃばこ
「なんか変な雰囲気の所に入ったわね」
「…………」
ギャリーの言葉は聞こえていたが、私の頭は動いていなかった。
あのメアリーが……ずっと一緒にいたメアリーがゲルテナの作品――あの動く絵やマネキンと同じだったなんて……。
「イヴ」
隣を歩いていたギャリーが足を止め、私と目線を合わせるようにしゃがんだ。
「メアリーのことはショックだったでしょうし、すぐに気持ちを切り替えるのも難しいでしょうけど、」
一度言葉を区切って、うつむいていた私の顔に手を置いて少し上に向かせて続けた。
「下を向かないで、前を見て。少しづつでいい。一歩づつでいいから、前を見て歩きましょ」
ね! と優しくギャリーは笑った。
ギャリーだって辛いはずなのに……。
「……うん。ありがとう、ギャリー」
ギャリーのおかげでやっと笑うことができた。