第8章 おもちゃばこ
アタシは絵の具玉を集めるために、たくさんの部屋を巡っていた。
その時、本棚がたくさんある部屋にたどりついた。
たまたま近くにあった本――ゲルテナ作品集 下 ――にその真実はあった。
「メアリー」
ゲルテナが手掛けた生涯最後の作品。
まるでそこに存在するかのようにたたずむ少女だか、
もちろんのこと彼女も実在しない人物である。
*
「これが真実よ。普通の人みたいに接してきたから分からなかったわ」
「ウソ……ウソだよね、ギャリー?」
私はすがるような気持ちでギャリーを見つめる。
だが、ギャリーは無言で首を横に振り、そこに落ちていたメアリーの薔薇を指差して言った。
「触ってみれば分かると思うけど、その薔薇、本物そっくりに作られた造花だわ」
確かにメアリーの薔薇は、私の薔薇と質感が違った。
「イヴ、仕方ないけど、受け入れるしかないのよ」
「……うん」
受け入れなくてはならない。これが真実なのだから。
私は泣きそうなのを我慢して、ギャリーの手を強く握りながらゆっくりと前に進んだ。