第5章 黄色い薔薇
ドアを開けて中に入ると、いくつかの本棚と大きな絵が一枚あるだけの部屋だった。
大きな絵の前に二人で立ち、見上げる。
「絵のタイトルは……『決別』ね。なんか悲しい絵だわ」
「うん……そうだね」
私が頷いた次の瞬間、フッと視界が黒一色に染まった。
「うわっ!! 停電!? イヴ、いる!? ちゃんとそこにいる!?」
「大丈夫、いるよ」
……なんだか凄く焦っているけど、ギャリーって暗いの苦手なのかな?
「よかった……しっかし、電気付かないわね~……あ! アタシ、ライター持っていたんだっけ。まぁ、一時しのぎにはなるでしょ……よっと!!」
ボッ、とライターの付く音がして部屋が明るくなる。
そこに広がっていたものは――
『や め ろ』
『い や だ』
『こ わ い』
『し に た く な い』
クレヨンで大きく書かれた文字だった。
私は無言でギャリーのコートの裾を握って顔を見上げる。
ギャリーはそんな私の頭を優しく撫でてくれた。
「ほんっとキッツいわ、精神的に……まぁ、ここで立ち止まっていても何も良い事無いから、先に進みましょうか? イヴ、大丈夫?」
心配そうな顔を向けてくるギャリーに、私は出来るだけ笑顔で答えた。
「大丈夫だよ、ギャリー」