第4章 レモンキャンディー
私は小さな部屋がいくつも並ぶ道をひたすらに、ただ、ひたすらに走っていた。
理由は簡単。
「ギャァァァァアアア!!」
何者かに追われているからである。
それから逃げる為に、走ってはドアを開け、走ってはドアを開け……を繰り返していたのだが、いつまでも追って来る。
(何で来るの!? もう疲れたし、そろそろ諦めてよ……!)
そう思いながら次のドアを開けようとするがドアノブが回らない。
(えっ! 嘘! 何で開かないの!?)
今までこんな事は無かった。ここまでのドアは簡単に開いたのに……!
ドアノブを必死に回していると背後から、
――ドンッ……! ドンッ……!
と、何者かがドアを叩く音が聞こえた。
(このままだと私……!)
「お願い! 開いて!」
叫んだ刹那、カチッと鍵が開く音が耳に届く。
「開いた! よかった! これで……!」
逃げたい一心でドアを開ける。そこに見えたのは、
「嘘……。何で……」
頭の無い石像や額縁から上半身が出た女の絵。
反射的に戻ろうとするが、ドアを開ければ、そこには私を追って来たヤツがいる。もう逃げ場は無い。
そう悟った瞬間、頭の無い石像に殴られて――