第13章 敗北の慰め
私の体に触れる影山の手はまるで腫れ物を扱うみたいに丁寧だった。
さっきのセックスの上書きをするみたいに、優しい愛撫を続ける。
目を合わせてキスして言葉を交わしながらセックスした。
しつこいくらいに嫌じゃないか聞き合って。
咥えるだけの生ぬるいフェラをして、影山は噛み付いた傷を慰めるようにキスして舐める。
ゆっくり挿入して、挿れたままキスして……。
いつしかそれは試合の敗北じゃなくて、私たちが傷つけ合った痛みを慰めるためのセックスになってた。
達した後は二人でベッドに倒れ込んで、布団を被って抱き合った。
静かな部屋の中で私は表情の落ち着いてきた影山に語りかける。
「受け入れるのって難しいんだね……」
呟くような声で言う。
影山を受け入れたいって思って、言葉にはしてみたけれど。
それを体で受け止めるのは想像してたよりもずっと大変で、私にはまだまだ耐えきれる物じゃなかった。
「……たぶん私、間違ってた」
セックスでお互いが傷つけあう前から、私の考えが間違ってた。
二人がいた時にどちらかの痛みを軽くすることは可能かもしれないけど、それは一人がもう片方の痛みを全部背負うことを指してたわけじゃない。
その勘違いで泣いて傷つけた。ごめん……。
「何も言うな……。間違ってたのはお前だけじゃない。情けなくなんだろ……」
影山の手のひらが私の後頭部をゆっくり撫でていく。
結局このセックスに特別な意味なんてなかった。
お互い傷つけあった時にどれだけ辛いかが分かっただけで、試合の慰めなんて全く考えてなかったし。
セックスの痛みをセックスで上書きしたように。
バレーの悔しさはバレーでしか拭えない。
「もう絶対こんなことさせねーから……。絶対もう負けねぇ…」
私の頭を強く抱いた影山。その中で私は頷いた。
私も……。
ちゃんとみんなと同じ道に立って、強くなるから。