第13章 敗北の慰め
一瞬柔らかい感触が触れただけで、息苦しそうにすぐ離れていく。
「っ……」
「まだ……」
唇が触れて離れる度に、何度ももう一回を強請る。
影山の瞳がまだ悲しい色をしてる。
「まだ、もう一回」
「…っ」
「まだして」
申し訳なさそうにキスをする影山の唇が、どんどん離れる時間を短くしていく。
触れ合う時間が増えていく。
チュッと触れて離れていって、次を私が欲しがらなくてもまた唇が触れる。
影山の両手はゆっくり私の背中を這って首筋を通り、私の両頬を包み込んだ。
右、左……順番に顔を入れ替えるようにキスを交わす。
私も応えるように影山の両頬に手を添えて、触れ合うだけのキスを続けた。
どちらからともなく唇を離すのを止めて、ギュッと唇を押し付け合ったまま動きを止める。
「んっ…」
「ん……」
そのまま体を揺らしてベッドになだれ込んだ。
影山が私に覆いかぶさったまま、二人で目を閉じて長い口付けを交わす。
甘いキス……。
慰めの意味を忘れてるみたいに、私たちはキスに夢中になった。
それでもお互いを想い合う今までで一番やさしいキス。
決して傷つけないように間違えないように、過度な程に丁寧に触れ合わせた。
いつしか私はそのキスに満足気に微笑んでいた。
目を開けた影山と静かに視線が交わって、影山は私の笑顔を見ると眉を下げて悲しそうな表情で私の頭を撫でた。
「もう傷つけない……」
「私も…、傷つけない…」
誓いみたいに唇をもう一度重ね合わせれば、瞳の端から少しだけ涙がこぼれ落ちる。
影山の舌が唇を割って入ってくるのを私は受け入れた。
ゆっくり暖かい舌が唾液を零しながらぬるぬると口の中を這う。私は舌を絡めてそれに応える。
なんて愛おしいんだろう……。
影山の首に腕を絡ませて与えられるキスに時を忘れて没頭した。