第13章 敗北の慰め
その声に、言葉に……。
体が震えるほどに痺れた。
犯すという言葉に込められた、いつもと違う影山の心情。
こんな時に愛のあるセックスなんてできるわけない。
いらない。いらないから全部…溜め込んでしまいそうなものをぶつけてほしい。
影山の全部を受け入れるから。
「……部屋、いこ」
体を離した一瞬でセックスのことから意識がそれないように、ずっと影山のことを考えて手を引いた。
階段を上る時も、意識はずっと触れた影山の手に向けた。
扉を開けて、カーテンの閉まった部屋が覗く。
先に私が入ってその後を静かに影山がついてくる。扉を閉めれば、一層沈黙が私たちを襲った。
やめようなんて言葉にはしないけど、きっと私たちのどちらも乗り気なんかじゃなくて……。
こんな形でセックスしたいなんて思ってない。
試合前日に影山にキスしてもらった時の方がずっと熱かった。
すぐに触れ合えるこの状況に立って初めて、及川先輩の命令が残酷だと思った。
「影山……酷くして、いいよ」
違う、そうじゃなくて。
私は心の中で首を横に振った。
影山が心の痛みをぶつけられるのなら、言うべきなのは“していい”じゃなくて。
「ひどく、して……?」
私の言葉に影山がピクっと肩をならして、小さく目を見開いた。
やっと影山と目が合う。
影山の気持ちを楽にするつもりでかけたはずの私の言葉に、影山はもっと苦しそうに顔を歪めた。
「シホ……」
ゆっくり手が伸びてきて両肩を掴み、私をベッドに押して座らせる。
「優しく、できねぇ。……殴っていいから」
酷くさせてくれ。
私が頷くと、痛みを感じる強さで耳たぶに噛み付いた。