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【ハイキュー】大王様の奴隷〜命令H〜【R18】

第11章 朝の二人


岩泉先輩が私の顔を覗き込んで、至近距離で目を合わせてくる。


「俺はお前が好きだ。シホは?」


咄嗟に答える資格すら見い出せない私の頬を、更にぎゅむっと押し潰して岩泉先輩は言う。


「俺のこと嫌いか?」


「……!」


優しく問いただすような声。


すぐに勢いよく首を横に振る。


掴まれて岩泉先輩の手首のところで固定された頬。


少し首が振りにくかったけど、岩泉先輩の手を振り切りそうなぐらい激しく振った。


岩泉先輩はよしっ、って頷く。


「じゃあただの元先輩か?」


首を横に振る。


「仲の良い友達か?」


首を振る。……違う。


岩泉先輩の優しすぎる声が、焦らなくていいから答えを出せ、って。


……涙が、また……。


「他の男と同じか?」


ポタッ……ポタッ…


溢れ出した涙が岩泉先輩の指を伝って、次々に水面に落ちていく。目の前の岩泉先輩がまたぼやけて見えなくなって。


涙でぐちゃぐちゃの顔をしながら、下唇を噛み締めて首を振った。


「それじゃあ、好きか?」


余計な言葉は付けずに、真っ直ぐ私を答えに導いてくれるその声に。


またごめんなさいよりも先に好きが溢れ出した私はきっと、どうしようもないくらい岩泉先輩が大好きで……。


それと同時に目先のことしか見えてない、どうしようもない女なんだろうな。


「好きっ……す、き…です…」


いつか必ず大きな不幸が降り注いで、今日の選択を悔やんでも悔やみきれない日が来ることを。


岩泉先輩を裏切ってまで多くのものを手に入れようとしたことが、間違いだったと思い知らされてしまうことを。


私はまだ考えもしていないけれど。


知っていてはきっと、得ることの出来なかった幸せが沢山あって……。


甘い考えなんだけれど、もしその不幸が訪れない未来があるのなら……。


私はその未来を進んで今日のこの選択を、間違いにはしたくないんだ。


「な?だから今は、それでいいんだよ」


優しい声と笑顔。腕を強く引かれて、岩泉先輩の腕の中におさまる。


抱きしめられた腕の中で声を押し殺して涙を流した。


温かい雫が岩泉先輩の胸を濡らすけれど、私でさえ何に対する涙なのかはもうわからなかった。
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