第11章 朝の二人
なんだか、心の距離が縮まった気がするなあ……。
ほのぼのとしていると、ふと思いついたように岩泉先輩が肩を叩いて背中を向けてきた。
「……?」
「疲れてんだ。肩揉んでくれ」
急に……?前触れもなく、ほんと突然だ。
とは言っても合宿中で。昨日も遅くに私を送ってくれて、今も朝早く起きて一緒に過ごす時間を作ってくれてるんだ。
疲れてないわけないよね…。
「わかりました。ほんの少しでしたら、寝てても大丈夫ですよ」
「悪いな」
筋肉がついた頑丈そうな肌に目を移す。
高校生だしゴリゴリなマッチョってわけではないけど、岩泉先輩の背中は筋肉で厚みがあって普段の努力がうかがえる。
後ろ姿のせいなのか肩を揉むって名目上だからか、変な方向に気持ちが傾かなかった私に安心した。
変な気持ちにはなってないけど、岩泉先輩の役に立てることや体温に触れられることは言わずもがな嬉しい。
「……失礼します」
恐る恐る肩に両手を滑らす。
緊張しちゃってる……。
私の肩より全然広くて厚みのある先輩の肩。温泉に入ってるから、中の方からじんわり熱さが伝わってきた。
親指に力を込めてとりあえず少し揉んでみる。
凄くこってるわけじゃないけど、ちょっと硬くなってる。首の後ろから傾斜になってる部分にかけて張ってると言うか。
「ちょっと痛いかもしれません」
「痛かったら言う」
「わかりました。力入れますよ」
「……っ」
痛すぎないように軽く力を込める。ほぐれるまでは小刻みで弱い力のまま揉み込む。
こってる時に凄い力で肩揉みされると、筋肉がつる時みたいになって痛いから……。
お年寄りとか親の年齢になるとそれも気持ちいいみたいだけど、残念ながら私はその領域に達してない。
岩泉先輩は案外大丈夫そうだな……とは思うけど、ここは私の基準とやり方でやらせてもらおう。