第11章 朝の二人
楽しくって、もっと悪態をついてみたくなる。
からかってるくるのは岩泉先輩の方だから、どっちが悪態をついてるかっていうと微妙だけど。
ふざけあってる空間が、こんなにも楽しいなんて。
「そもそも私が反逆者なら岩泉先輩も立派な共犯者ですからね!」
「言えてるな。つーか言い出したの俺だし、主犯じゃねえか?」
「確かに……だったら及川先輩にバレた時、私が無罪放免でもいいですか?」
「その場合俺がお前を許さねえべ」
「ええ〜」
岩泉先輩相手にここまでふざけた態度をとるのが初めてだったけど、怒ることもせず先輩も楽しそうに答えてくれる。
言い放った私の頭を軽く叩いてきて、その優しい痛みにすら愛おしさを感じた。
ただ岩泉先輩を好きなのか、それとも変態だから痛みも嬉しいのか……。
もし変態だからだった場合、これから先が心配になっちゃうなぁ。
「共犯なら共犯らしく、最後まで一緒だっつの。あのクソから逃げるより俺から逃げる方がずっと後悔することになるからな」
「くすっ、覚えておきます!」
クスクスと笑いをこぼして返せば、一連のおふざけに対してなんだか満足してるみたいな頷きを岩泉先輩は見せた。
顔を見合わせて訪れる沈黙。
「……クッ」
「ふふっ…、…ッ」
どちらからともなく吹き出して、改めて二人で声を出して笑い合った。
目が細まって自然と口角が大きく上がる。
駄目だ、本当に大好きだ。岩泉先輩のこと、好きで好きでたまらない。
思えばこんな子供っぽい無邪気な笑顔を私に向けてくれたのは初めてのことなんじゃないかな?
男らしい先輩の顔があどけなくなって、可愛いな……とか思っちゃったり。
今度二人であった時もこんなふうにふざけ合って、この笑顔を引き出したい。ていうか絶対に引き出して見る……!
「お前、こんな生意気な態度もとるんだな」
「とりますよ全然!」
元気に答えた私にさっきの笑いのせいでツボが浅くなったのか、岩泉先輩はまた楽しそうにケラケラと笑った。