第11章 朝の二人
混浴に向かう道を歩くと、どんどん緊張が高まってきた。
岩泉先輩いるかな……?そもそも別の人がいたらどうしよう…。
「あ……」
そっと覗き込んだ先にいたのが岩泉先輩で、思わず口元が綻んだ。
壁に背中をつけるようにして温泉に浸かる岩泉先輩の横顔が、私に気づいて少し照れくさそうな表情を見せた。
………っ。
私まで照れてしまう。……というか恥ずかしくなってしまう。
岩泉先輩と朝から二人きりで混浴なんて、改めて考えるとこの状況凄いかも……。
走らないように気持ちを落ちつけて、岩泉先輩の元に移動する。
じっとこっちを見てる先輩。なんとなく私が来るから視線が向いてるんじゃなくて、ほんとにジッと見てる。
「な、なんですか……」
どこか変……?だったりする?
思うことがあるなら何か言って欲しい。
「いや、改めて見るとエロいなと思って」
「……!」
顔に熱が集まって、グッと熱くなるのがわかった。
え、えろ……って、何言ってるんですか…!!何か言ってとは思ったけど、求めてたのと違う……!!
包み隠さず言う岩泉先輩とは対照的に、私は恥ずかしくてたまらない。
体を覆うタオルからはみ出した肌へ、岩泉先輩の視線が移る。岩泉先輩の視線が向けられた部分を、私は腕で反射的に隠した。
「今更恥ずかしがるなよ。……こっちまで、なんつーか……」
声が若干小さくなる。ほんのり岩泉先輩の顔が赤く染って、顔ごとゆっくり逸らされた。
岩泉先輩にそれされちゃうと、もっと恥ずかしくなっちゃう……。
また顔に熱に集まるのがわかる。
恥ずかしがる岩泉先輩なんてズルい……。
普段男らしいのに、ちょっぴり可愛く見えてしまって、胸の辺りがキュンと音を立てた。
意図的じゃないとはいえ私の行動がその表情を引き出したんだと思うと、それも嬉しくてふわふわした気持ちに包まれる。
私たちに付き合ってるんだな、って実感がとても湧いてくるんだ。