第11章 朝の二人
シホside
朝4:30……。セットしたアラームが鳴り響く。
ぱっと目が覚めて、浮き足立った気持ちで荷物を準備した。潔子さんが起きてないのをみて安心した。
こんな早い時間に私の都合で起こしちゃうのが申し訳なさすぎるし、気をつかってもし一緒に行くって言われたら、ちょっと都合が悪いというか……。
他の烏野メンバーも起きてないことを祈って、音を立てないように部屋を出て廊下を通り過ぎた。
向かう先は赤い暖簾の掛かった、女風呂。ここの旅館はちょうど四時半から朝風呂のサービスをしてる。
【おやすみ】
それだけ書かれていたメールの画面。嬉しくてたまらなくて、返信しようとした時だった……。
あれ……まだ続きがある?
ボタンを押して二行分下げてみると、おやすみの四文字よりも長い文章が出てきて。
嬉しさのあまり声が漏れそうになるのを、潔子さんの横でなんとか抑えた。
文章は、朝風呂に行って夜の汚れをしっかり落とせ……っていうのから始まって。
普段及川先輩ばかりからそういった内容のメールを貰ってる私は、大好きな人からの誘いがすごく嬉しかった。
【もし誰もいなかったら、二人で風呂入るか?】
今でもこのメールを見た時の喜びと驚きを再現できるくらい。幸せすぎる……。
誰もいない脱衣所で浴衣を脱ぐ。岩泉先輩の事しか頭に浮かばなくて、浴場に入るまでがほとんど無意識だった。
もうわかりやすくドキドキしてる……。でもその前に、まずは体洗わなくちゃ。
岩泉先輩が昨日タオルで拭いてくれたみたいに、優しく丁寧に泡を滑らせる。
けれど会いたい気持ちが急かして、いつの間にか丁寧さは消えてしまっていた。