第1章 1話
及川side
「……は?」
「だから、私、徹と同じK大じゃなくて、東京の大学に進学する事にしたの。」
「な、なんでさ。一緒にK大行こうって言ったじゃん…?K大、そこまで偏差値低い所じゃないよ?…わざんざ東京まで行かなくても」
「もう、決定事項なの。先生にも、もう言ってある。
勝手に決めて、ごめん。」
「な、なんでさ。絶対にゆるさないから。
ちゃんとした理由も教えてもらえないのに、俺が、うんわかったなんて言うと思った?
絶対にだめ。」
「なんで徹が決めるの?これは私の人生なんだから大学くらい好きな所に行きたい。」
「え、なに。じゃあ最初から一緒にいたくないって事なの?」
「そうじゃなくて、別に無理に一緒の大学じゃなくてもいいんじゃない?ってこと。
別れる訳じゃないんだからいいでしょう。」
「いや、だめ。遠距離なんて絶対に無理。
心配で心臓破裂するから。」
「何を心配しているのさ。とにかく、もう決めたことだから。」
「だめって言ってるじゃん。俺は、遠距離恋愛なんて出来るタチじゃないの。」
「じゃぁ、別れる?」
「それ、本気で言ってんの?」
「……本気、だけど?」
「別れるつもりなんて微塵もないから。
どうしても東京行くっていうなら俺もそこにする。」
「だめ。来ないで。」
「なんで?」
「なんでも。」
「意味わかんない。お前さぁ、自分勝手すぎない?俺も行って何が悪いのさ。」
「……もう、この話は明日にしましょう。」
そう言い捨てて望美は走り出した。
なんなのあいつ。
「ちょっと!逃げるの?待ちなよ!!」
二人とも、興奮状態だったから気付かなかったんだ。
俺達に突っ込んでくるトラックの存在に。
望美の手を掴んだ瞬間。
頭にキーンと響くブレーキ音と、2人を轢いた鈍い音が響き渡った。