第1章 1話
及川side
体育館に着くと、やはり岩ちゃんがいた。
「もー!なんで先に行くのさ!」
「だって、お前望美と話してただろうが」
「まっててくれてもいいじゃんかー」
「うるせぇな。さっさと着替えるぞ」
先に部室に行ってしまった岩ちゃん。
遠まわしに誘ってくれる不器用さが大好きだったりする。
それから部活が始まり、最初のストレッチを念入りにやっていた頃。
そういえば望美がまだ来てない事に気づく。
「望美、なにしてんだろう。」
だんだんと心配になってきた。
いつも遅刻なんかしない望美が、練習始まってるのに来てないなんて。
探しに行こうか?なんて考えていたら
「すみません!」
はあはあと息を切らしながら、髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら、望美はやってきた。
もともと運動があまり得意でないのに走ってくるという健気さがとても愛おしくなった。
「望美ちゃん!遅かったね、どうかしたの?」
「ごめん、用事が長引いちゃって…すぐ着替えるね!」
早口で伝えるとそそくさと女子更衣室に走っていってしまった。
よかった、怪我とかされたらたまったもんじゃない。
「及川ぁぁああ!サボってんじゃねぇぞ!!!」
「及川ー。さっさと戻ってこい、ゴリラが暴れるぞ」
ブシッ。余計な事を言ったマッキーが岩ちゃんに殴られていた。
本来俺に来るはずだった鉄拳をマッキーがくらってくれたおかげで痣が増えないで済んだ。
岩ちゃんの拳は痣が出来る程痛いのだ。
ありがとう、マッキー。
「早くしろクソ川!!!」
あぁ、痣がまた一つ増えたな…
ストレッチをしながら考えた。
望美の用事ってなんだろう?