第1章 1話
及川side
やばい。
望美がのそりと目覚まし時計のアラームを消すと、ゆっくり起き上がり伸びをした。
あぁ、終わったな。
きっと叫ばれて警察に連れてかれるかも。
病院の次は警察かよ。
なんて思っていたら、なんと望美は俺の存在に気づかないのだ。
部屋に人がいたらすぐ気付くだろうに、望美は気づかない所か俺の横を通ってドアを開けた。
まるで、俺が空気になったように。
望美がドアを開けた瞬間を見計らって俺も望美の部屋から出た。
ゆっくり音をたてずに階段をおりる望美。
その後をついて行ってる俺。
なんで?なんで?なんで俺に気づかないの?
気付いたら、それはそれでまずいけど気づかないのもまずいと思う。
俺って透明人間?
望美が顔を洗った後、パンを焼いて食べ始めた。
俺は望美の隣で、黙々とパンを食べている望美を眺めていた。
そういえば、お腹が空かない。
トイレに行きたいとも思わない。
もう、何がなんだかわからない。何がどうなってるんだ。
パンを食べ終わった望美は歯を磨いた後制服に着替えるため、自分の部屋へ戻っていった。
流石に着替えは覗かないよ。
今の時点で時間は6:15。
朝練は7:00からでまだまだ余裕があるのに望美は用意をほぼ終わらせていた。
え、まって。
俺は重要な事を忘れていたようだ。
俺、ここにいるのに部活とこどうするんだろ?
望美には見えてないし、ということは皆にも見えないのかな?
きっとそうだよね。
今も目の前で新聞を読んでいる望美のお父さんに、俺は見えてないんだから。
じゃあ、行方不明扱いになるのかな。嫌だ。
もう…どうなってんだよ。