第64章 悪
そんな二人に村上は説いてみた
村上「じゃぁ・・・・
自分たちの命を永らえるために
赤ん坊を殺そうと?」
その言葉にミヨは俯いたままだった
しかし丸山は静かに首を振った
丸山「たぶん、僕の考えでは
彼女は自分の命は
永らえる気はなかったと思うよ・・・・」
その言葉に村上は静かにミヨを見た
すると丸山はミヨに気を使うように
言葉を続けた
丸山「彼女は、一人しか乗れない
ボートなら相手に譲る人だから
もう一人の命だけで
一人の赤ん坊は返そうとしたんじゃないかな」
その言葉に
ミヨは顔を手で伏せて泣いた
村上「一人だけを救おうとしたんやな」
その言葉に丸山が頷いた
するとミヨは
丸山の足に縋ったのだ
ミヨ「どうかお願いします・・・
ミナだけは助けてあげて下さい・・・」
ミヨは必死で丸山の足元で
涙を流し頭を下げ続けたのだ
村上もその姿を哀れに思い
何も言えずにいた
丸山には分からなかった
自分が見てきた人間は
いつも己だけの欲で生きていた
しかし
目の前にいる少女は
自分の命を投げ捨てている
そう、自分が闇に迎え入れてしまった
仲間たちのように・・・・