第62章 心
大倉は一人で食堂の絵の前に立っていた
愛する妻が閉じ込められている
絵を悲しい瞳で見つめながら
自分の気持ちと闘っていたのだった
大倉「雪・・・・・」
大倉は少し寂しそうに微笑んでいる
マリア様の絵を見つめて囁いた
絵を見つめていると
大倉の目には
マリア様が雪に見えてくる気がする
そして
雪のいつもの言葉が
聞こえてくる気がしたのだ
自分は大丈夫だから心配しないでと・・・
大倉は小さく微笑んだ
雪ならそう言うだろと思いながら
そっと絵に大倉は気持ちを込めて
手を触ると
大倉「必ず、助けるから待っててね・・・」
雪に語り掛けるように声をかけた時に
後ろから安田がやって来た
寂しそうに雪が閉じ込められている
絵を見つめている大倉に
安田は心配そうに声を掛けたのだ
安田「なぁ大倉、大丈夫かぁ?」
声に反応するように
大倉がゆっくりと振り返ると
心配顔の安田が立っていた
そんな安田を見ると
大倉は気遣うように微笑みながら
大倉「もう、大丈夫だよ・・・
少しだけ雪と話をしたくってね・・・」
そう言うとまた絵を見た
安田「そっか・・・」
安田はその言葉に何と言っていいのか
分からなかった
相槌を打つのがやっとだった
そんな安田をわかってか
大倉は笑顔で振り返り
安田の方に歩き寄って来た