第51章 喪失 14【狙い】
横山は資料室に一人で過ごしていた
村上から返してもらった
あのタロットの本を見続けていたのだ
死神のページを開いたままで
考えていたのだ
赤ん坊が隠されている場所を
隠すなら絶対にこの屋敷だと
だから
自分を向こうの世界に呼ぶために
錦戸と安田を連れて行ったのだと
死神もいて人目の多い向こうの世界より
こっちに隠すだろう
雪を連れ去ったのも
仲間を連れ去ったのも
全て向こうの作戦だったのだ
本当に頭の良い犯人だと思った
その事に踊らされていた事が
横山の負けず嫌いに火を点けていた
でも、この世界のどこに?
するどい吸血鬼たちの感覚を誤魔化して
どこに隠せるのだろうと
考えている横山の耳に
ノックの音が聞こえてきた
音に反応するようにぶっきら棒に答えた
横山「開いてるで・・・」
横山の声を聞いて扉が静かに開いた
そこに静かに立っていたのは大倉だった
大倉は中に入るわけでもなく
扉の所に立ち尽くしていた
ソファーに寝そべったまま
その姿を見た横山は声をかけた
横山「どなんしたんや?」
その言葉に大倉の瞳が大きく揺れた
大倉「子供の事なんだけど・・・」
横山にはそれだけで
大倉の言いたい事は分かっていた
横山「今、考えてる所や」
横山は起き上がると
静かにソファーから立ち上がり
手にしていた本を閉じて棚に直した
それ以上、何も言わない横山の姿を見て
大倉「助けて欲しい・・・」
消え入りそうな声で頭を深々と下げた