第5章 折原くん
私が折原くんのことを知ったのは1年の夏くらい
静雄くんと2人で歩いている時、すれ違いざまに微笑みかけてきてくれた気がした
それが折原くんを知るきっかけ
その当時は名前も知らないし話したこともないしで、何で私に目を合わせ、微笑みかけてきたのか
理解できるはずもなかった
でもただ一つ分かったのは、そのときの笑顔がとてもかっこよかったということ
通り過ぎてから振り返ってみたけど、そこに見えるのはやっぱり彼の背中だけだった
そのあとで名前を知って、学校中の女の子から「かっこいい」なんて言われてることも知って。
岸谷くんと同じ中学だったみたいで、色々な話を聞いたりもした
昼休みには中学校時代の卒業アルバムを見せてくれたり…
部活動のページには、“生物部”と書かれたところに岸谷くんと折原くんが並んで座って、植木鉢を持って写っていた
彼のことをきちんと知ってから、すれ違いざまには私もニコッとするようにした
1年以上、それだけだった
すれ違って、互いに微笑むだけ
変な関係。
それでも変わらず私は折原くんをかっこいいと思っていたし、
私が教室にいて折原くんが体育のときは、少し見惚れたりもした
そういうときに絶対岸谷くんは、
「少しは静雄の顔色も伺いなよ?」
と言ってた
私は何のことか全く分からなくて、とにかく「うん」と一言返事をするだけだった