第3章 雑用少女
「ふあ…あーよく寝た」
お昼すぎになってようやくルフィさんが起きてきた。私は磨いていた手を止め、お辞儀をした。
「おはようございます。ルフィさん」
「んあ? ナルか……うっひょおおお!? なんじゃこりゃぁぁぁ!?」
寝起きによくこんな大声を出せるものだと私は思わず耳を塞いだ。一体何を驚いているのだろう。ただ単に油汚れを落とし、奇妙な汚れを取り除き、床に散らばっていたものを落とし、床を磨いただけだというのに。……まさか、私は何か失敗してしまったのだろうか。私はバッとこちらを見たルフィさんにビクッとした。もしかして殴られるのだろうか。
「これ……全部お前がやったのかぁ!?」
「は……はい。す、すみませ……」
「すんげぇぇ!!!」
「…………へ?」
私はいつの間にかルフィさんの腕にぐるぐる巻にされ、甲板に連れ出されていた。
「うおぉぉ! ここもピッカピカじゃねぇか!? 俺の特等席も!?」
「あ……お世話になるので……せめて掃除はと……うひぁ!?」
私は所謂高い高い状態。こんなに高く上がったことは無かったので混乱した。でも、そこから見える果てしなく拡がる海に私の心は奪われた。とてつもなく綺麗で、自分なんかちっぽけに見えた。……と惚けていたら下へと落ちていき、私は叫んだ。
「あんたはなにしとるんじゃぁ!!」
「へぶっ!」
私は高鳴る胸を落ち着けるために何度か深呼吸をした。チョッパーが慌てた様子でこちらへ走ってきた。
「ナル! 大丈夫か!?」
「……う………うん。ビックリし……」
「ナル!」
私はビクッとなった。ルフィさんを見ると、目がつり上がっている。私は慌てて立ち上がった。
「は、はい!」
「ありがとな! サニー号も喜んでる」
「………え…」
ニヒヒと笑って私の頭をわしゃわしゃと私の頭を撫でるルフィさん。それはあいつらが私に当り散らすものとは全くかけはなれたもので………。私は戸惑ったが、何故か照れくさくなった。