第1章 【黄黒】ご機嫌のとり方
「黒子っちー!!明日久々に二人ともオフッスね!なっにしよっかなー♪」
夕食時、ダイニングのテーブルに座りながらるんるんと鼻歌を歌う黄瀬くん。その正面に座っている僕なのですが…
「…黄瀬くん、あの実は明日誠凛の皆と久々に会う約束が出来て。お昼にバスケをした流れで夜は皆でご飯に行くことになったんです。」
僕がそう言うとピタッと鼻歌をこちらを真顔で見つめたまま動きをとめた黄瀬くん。するといきなり机にドンっと頭をのせると
「……ひどいッス。最近全然黒子っちといる時間ないのに…俺より誠凛の皆のほうが大事ッスか?」
と打っ伏した顔からチラリとこちらを上目遣いで見てくる。
「黄瀬くんとは一緒に住んでますしほぼ毎日会えるじゃないですか。」
僕のその言葉を聞いて頭をあげると黄瀬くんは机に“のの字”を書きはじめました。
「…それでも俺は足りないッス。最近二人で出掛けたのだってコンビニか本屋くらいじゃないッスか。どっか二人でお出掛けしたいッスー!!」
ああ、まったくこの人は。いつまでたっても子供みたいに駄々をこねて。
「それでももう約束してしまったので。なるべく早く帰ってくるようにしますから。」
「早くって何時ッスか?!」
「夕食も済ますとしたら…9時とか10時くらいですかね?」
「いやッスー!!!遅いーー!それいつもより遅いじゃないッスか!!」
「もう決まったことなので。なにかお土産買ってきますから。」
「やだやだやだやだやだやだやだやだやだ!!」
このまま構い続けても話が終わらなそうなのでもうほかっておくことにしました。
食事を終えてお風呂をすましベッドに入ると先にベッドに入っていた黄瀬くんの横に自分も横になる。
「…黄瀬くん?」
いつもなら僕がベッドにはいると秒で飛びついてくる彼が今日は背を向けたままこちらに近付こうともしません。
「……黒子っちは俺より誠凛をとったんス。」
ボソッとそう言ったのが聞こえた。
はあ、まだ拗ねているのか。
かまってあげてもいいのですがかまったところで明日の予定を変えることは出来ない。黄瀬くんのご機嫌を取る方法はいくらでもあるけど今日はもうこのままにしておこう、と僕はおやすみなさい。とだけ告げ目を閉じました。