あなたの声が聞きたくて【another story】
第11章 澤村大地
あの日、彼女の悩みを聞いた公園で
俺は初めて自分の為に発せられた声を聞いた。
あの体育館での言葉は烏野と青城、どちらにも向けられた言葉だったから。
彼女の口から奏でられる声色は、想像していたよりずっと綺麗で可愛らしくて。
その声で「好きだ」と告げられた瞬間
夢でも見てるのかと思うほど衝撃的で、何度も何度も確認してしまった。
だが、喜びに浸る俺に彼女は言った。
「辛くなったらいつでも別れていい。」と。
自分は代表候補にも選ばれてるから練習で忙しくなる。春高の前には招集されるかもしれない。
だから殆ど会うことが出来ない。
彼女は苦しそうにゴメン、と笑った。
「それでもいい。高みを目指す事は悪いことじゃないだろ?自分の彼女が日本代表なんて誇らしいじゃないか」
「ありがとう…大地くん…」
そう自分の思いを告げた時の彼女の嬉しそうな顔を、きっと一生忘れはしないだろう。
こうして俺達の付き合いは始まった。