あなたの声が聞きたくて【another story】
第9章 岩泉一【番外編】4
朝起きて、目の前いっぱいに広がる逞しい胸板。
カーテンの隙間から差し込む朝日。
きつく回された腕を起こさないように少しだけずらして目覚まし時計を確認すると時刻はまだ5時半を指していた。
まだ早いじゃん…。
心の中で悪態を吐きつつも目覚ましがなるまでもう少し寝ていようと毛布の中に潜り込む。
「起きた、のか?」
寝起き特有の擦れ声にちょっとだけキュンとする。
「目覚めちゃって…起こしちゃってごめんね?」
「いや、いい…」
言葉は話せるのにまだ目は開かない。
「もう少しだけ寝ようか」
「んー…」
私に腕枕をして、抱えるみたいに抱き寄せるとすやすやと聞こえて来る寝息。
男らしいはじめが子供っぽくなるこのときが好き。
「もう少しおやすみ、はじめ」
うっすら髭の生えた頬にキスを落として私も眠りについた。